日本財団 図書館


 

016-1.gif

池田 由佳(いけだ・ゆか)1964年 大阪生まれ。
オーストラリアでのラジオアナウンサー、カナダでのツアーコンダクターを経て、クルーズ客船の世界へ。海で働く女性の草分け的存在で、探検船や豪華客船の乗組員として海上勤務後、現在はフリーのクルーズコーディネーターとして、客船の添乗・講演・取材・人材教育など幅広く活躍中。問合せ先:03(3445)5819

016-2.gif

シーボン・スピリッツ号
またもや目が覚めると、サントロペの港に近づいてきたのか、白い帆を浮かべたヨットの姿が目立ってきた。「これぞコートダジュール!」といわんばかりの碧い空に紺碧の海。あふれるほどの陽光がキラキラと眩しい。港を取り囲むようにカフェやレストランが立ち並び、洒落たブティックも多い。路地が幾重にも巡り、バロック式の教会や入り江の眺望に優れた城砦は、さしずめ太陽の散歩道といったところ。オシャレで小粋な港町を後に、180人を乗せた美しきプライベートシップは、次港のポールバンドルへと出港した。
ガイドブックにも載っていないのでどんな所かと思案したが、入り江に沿ってパステルカラーの家が瀟洒に並び、朝日に輝く入港風景は、食事も忘れて見入ってしまうほど素晴らしかった。専用のシャトルバスに揺られて15分、小さな漁村コリウールに訪れる。13世紀に建てられた石城を登りつめると、眼下にはサファイアブルーの海岸が広がり、しばし息をこらえてゆっくり時を刻む。赤いレンガ屋根の奥には濃い緑のブドウ畑が続き、真っ青な空とのコントラストは、今も目に焼きついている。

016-3.gif

サントロペ
南仏の秘境をみつけた想いだったが、既にピカソやマチスが、名もない頃の安息の地としていたらしい。北で自信を失った芸術家達が明るい太陽と素朴な人々のもとで、再び光と色と自分を取り戻すのには最高の場所かもしれない。
家の窓には色鮮やかな花々が飾られ、わき道に入ると優しい風が頬を伝い、懐かしい匂いが込み上げてくる。「何だろう?この感覚は。」初めて来たところなのに、何故かとても落ち付き、心は遙か遠くまで飛んでいく。立ち去りがたい心境にかられながら、町の小さなアトリエで買った絵を想い出に帰船する。
変化に富んだ港町は、それぞれ印象深く心に残った。それも安定した満足のいくクルーズライフがあってこそだと思う。世界最高の船でエレガントな寄港地をクルーズするのは、まさに贅を尽くした旅といえるだろう。上陸すれば、華やかな光注ぐ陽春の紺碧海岸。船内ではそれに負けないくらいの優雅な時が流れ、何もしない、あるいは何でもできる贅沢が許されている。小型船とはいえカジノ、ジム、美容室、ライブラリー等の施設は揃っているので利用するのも良し、プールサイドで日光浴をするも良し、お気に召すままお過ごしあれ。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION